物損事故の損害賠償
物損事故(交通事故で人的被害がなかった場合)として処理されるのは、
- 自動車同士が衝突し、自動車は破損したが、けが人が出なかった場合
- 単独事故で道路周辺の店舗や壁などに衝突し、それらが破損した場合
などです。
ここでは、上記の場合に加害者に対してどのような請求ができるかをみていきます。
1.自動車が破損した場合
自動車が破損した場合に請求できる損害としては、(1)修理費、(2)評価損(格落ち)、(3)代車費用、(4)営業補償(休車補償)、(5)買換え費用(全損の場合)があります。
- 修理費
自動車の修理が可能な場合には、修理費用を請求できます。具体的には、部品代、工賃、事故部分の板金・塗装料金などです。
通常、修理費の認定は、自動車修理工場の見積書、請求書から行われますが、その金額について争いがある場合には、複数の修理工場で見積もらせて平均値をとるなどします。
修理が可能な場合であっても、修理費が事故直前の自動車の価値(中古価格)を上回ってしまう場合には、全損として処理され(経済的全損)、中古価格を上回る修理費については請求できません。
- 評価損(格落ち)
自動車の修理が可能で、十分な修理をした場合であっても、一度事故にあった車は「事故車」として価格が下落してしまいます。その価値下落分についても請求することができます。
この評価損については、裁判所の判断も定まっていませんが、ひとつの方法として、財団法人日本自動車査定協会に査定してもらう方法があります。有料ではありますが、査定士が事故車の査定を行い、事故減価額証明書を発行してくれます。この金額を目安に損害賠償請求をします。
- 代車費用
事故車の修理期間中や買換えの車が来るまでの間、代わりの自動車を借りたり、電車やタクシーを使った場合の費用を請求することができます。
- 営業補償(休車補償)
営業車(タクシーやトラックなど)の場合、修理期間中や買換えの車が来るまでの間の営業上の損害を請求することができます。
請求できるのは、期間中の純益です。1日の平均売上額から人件費、燃料費、その他の経費を差し引いた額になります。
- 買換え費用
事故車が修理不能なくらいに破損してしまった場合(物理的全損)や、修理費が事故直前の自動車の価値(中古価格)を上回ってしまう場合(経済的全損)には、買換え費用を請求することができます。
ただし、請求できるのは事故直前の自動車の価値(中古価格)までで、同車種の新車代金が請求できるわけではありません。被害者が車両新価保険特約付きの保険に入っていた場合には、一定の条件で新車代金との差額を受け取ることができます。
2.店舗や壁などが破損した場合
この場合、修理が可能であれば修理費用を請求できますが、不可能な場合には破損した物に応じて、中古価格または新品購入(設置)価格を請求することができます。
たとえば、家具類などのように中古価格がゼロに近い場合やブロック塀や電柱のように耐用年数が非常に長いものについては、中古価格での損害賠償ではバランスが取れないため、新品購入(設置)価格となります。
破損したのが店舗や工場の場合には、事故のために営業ができない期間については、営業補償として、休業中の営業上の損害を請求することができます。この場合の考え方は、営業車が破損した場合の営業補償と同様、期間中の純益となります。