刑事手続

 交通事故で被害者が死傷した場合、自動車運転過失致死傷罪(刑法211条2項)が適用されます。ただし、加害者が飲酒をしていて正常な運転ができなかった場合やスピード超過で運転が制御できない状態で運転していた場合には、危険運転致死傷罪(刑法208条の2)が適用され、刑が重くなります。
 これに対して、物損事故の場合には、酒気帯び運転など道路交通法違反がある場合を除いては、加害者を処罰することはできません。器物損壊罪は故意犯でのみ成立しますが、交通事故の場合、「あの自動車を壊してやろう」という意思を持って自動車を衝突させることはまずないため、器物損壊罪は成立しないのです。

 刑事手続においては、被害者との示談成立の有無や、嘆願書(上申書)の内容によって、加害者の刑事処分の軽重が変わる場合があります。そのため、加害者側から早期の示談を求められたり、「加害者に寛大な刑を望む」という内容の嘆願書を書くように求められたりします。
 加害者側の態度に納得がいくのであれば、示談を成立させ、嘆願書を提出するのも問題ありませんが、厳罰を望むのであれば、示談の成立を「加害者の誠意」と評価されないようにするために、示談は刑事手続終了後にしたほうがよいでしょう。そして、担当検察官に対して厳罰を求める旨の上申書を提出するなどして公判起訴してくれるように積極的に働きかけていくことが大切です。
 また、任意無保険の加害者の場合や刑事手続が長期(2年以上)に及びそうな場合には、他にも考慮すべき要素があるため、弁護士に相談することをお勧めします。

 刑事手続の過程で作成される各種の記録(実況見分調書等)は、民事の損害賠償請求の手続に用いられることが多々あります。被害者もしくは遺族等の立場で被害者参加人として、加害者の刑事裁判に関与すれば、起訴後第1回公判期日前に、検察官が証拠として提出予定の供述調書や実況見分調書を少なくとも閲覧することができます。被害者参加制度を利用しない場合には、第1回公判終了後に閲覧、謄写申請をすることになります。

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