事故発生から示談までの流れ(2)

2. 治療

○事故の治療には、健康保険や労災保険を利用できます

 病院によっては、事故によるケガの治療での利用を拒否するところがありますが、「第三者行為による傷病届」を保険者(協会けんぽや各市町村)に提出することで、健康保険を利用して治療を受けることができます。
 すぐに届出ができない場合は、電話連絡でも構いませんので、忘れずに行ってください(保険会社が手続を代行してくれる場合もあります)。

 また、通勤途中や業務中の事故であれば、労災を利用することが可能です。この場合には、病院に労災である旨を伝え、労働基準監督署長に給付請求書を提出します。

○入院する場合の個室利用は?

 個室の使用は、術後の絶対安静期間や介護を必要とするような状況に限っては、医療上の理由から、認められることもありますが、原則としては損害賠償の対象となりません。どうしても必要であれば、被害者自身が差額ベッド代を負担して移ることになります。

3. 症状固定

 症状固定とは、「傷病の治療を続けても、症状の回復が見込めないと医師が判断した状態」のことで、症状固定後に残った症状は、「後遺障害」となります。手続的には、医師に「後遺障害診断書」を書いてもらうことで症状固定となります。

 交通事故において、症状固定は重要なタイミングとなります。症状固定となると、それ以降に発生した「傷害による損害」(治療費・入院費等)は請求できなくなるからです。

 治療を始めてしばらくすると、保険会社から「そろそろ症状固定してください」と後遺障害診断書を渡されることがあります。しかし、上記のように、いったん症状固定してしまうと、それ以後の治療費の請求ができなくなりますので、そのタイミングは被害者と医師がよく相談し、納得したうえで決めるようにしてください。

 後遺障害診断書を書いてもらう際には、医師と相談しながら、残っている症状について、できるだけ具体的かつ詳細に記載してもらうようにします。漏れなく記載してもらうことが次の手続において重要になります。

4. 後遺障害の等級認定申請手続

 症状固定後に障害が残った場合には、加害者の自賠責保険に後遺障害等級認定の申請を行います。自賠責保険会社は申請書類を損害保険料率算出機構に送付し、損害保険料率算出機構が必要な調査を行います。

 等級認定申請には、(1)事前認定と、(2)被害者請求の2つの方法があります。(1)事前認定は、相手方の任意保険会社が認定申請を被害者に代わって行ってくれる方法、(2)被害者請求は、被害者自らが認定申請を行う方法です。

 (1)事前認定の場合は、任意保険会社がすべてやってくれますので、非常に楽ですが、加害者側の保険会社が等級を上げるような書類や資料を揃えるような努力をしてくれるとは思えませんので、等級は低めになります。 これに対して、(2)被害者請求の場合は、被害者の側で資料を集める必要がありますが、自分で提出する書類や資料を検討でき、納得のうえで申請を行うことができるというメリットがあります。

 損害保険料率算出機構が行う調査は、原則として提出された書類のみに基づいて行われます(書面主義)。したがって、後遺障害診断書の記載内容や添付される検査結果などの資料が重要な意味を持つことになります。

 申請の結果、後遺障害等級が認められると、「後遺障害による損害」を請求することができます。これに対し、後遺障害等級が認められないと、「治癒」と同様の扱いとなります。

 等級認定に不服がある場合は、異議申し立てをすることができます。

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